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真喜志民子

 真喜志民子さんは美しく、とても可愛い方だ。

 今年、80歳になられたそうであるが、若々しい感性を維持されている。

 若い人の仕事も丁寧に観てくださる。毎年、琉球大学の卒業・修了展に来ていただいている。

 2018年度の「卒業・修了」展は2019年2月に開催した。この年度で私は定年退職になるので、この「卒業・修了」展はほぼ毎日会場に居るようにした。いつも来場してくださる方々に定年のご挨拶をしたかったからだ。

 それに、この年度の四年生は、とてもよく頑張った。

 ここまでなのかなと思っていた二歩ぐらい先まで、制作を追求していた。それが、かなり評判になっていた。

 民子さんは、学生とゆっくりと話されている。私は、後ろからどんな話をされているのか聞いていた。

 内間汐梨さんの展示のところで、ご自分の頭を突然、ポンポンと叩き、「ああ、頭を柔らかくしなくっちゃ」と仰った。

 彼女の仕事をとても気に入ってくださったようだ。

 内間汐梨さんの仕事は、「染め」の本質を追求するとても良い仕事で、これを即座に分かってくださって、私もとても嬉しかった。

 民子さんは、突然、ハンカチ(よりも大きめ)を取り出して、展示台の上に拡げた。折りたたんだまま墨に付け染めたもののようだ。「誰にも見せていないけれど、こういうのが家にいっぱいあるの、観にいらっしゃる?」

 「もちろん、是非」と、前田のご自宅に伺う約束を交わし、展示を終えて一息ついた3月10日、内間さんと、仲間伸恵さん、妻と私の四人でお邪魔した。

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 真喜志宅は、いつも美しい。そして、いつも変化している。この日、思わず目を奪われたのは、蔦が絡んだ窓の布だった。

​ 窓の隙間から入り込んだ蔦が布の上を我が物顔に這い回っている。真喜志家は蔦もアバンギャルド。

​ 見せていただいた、秘密の布たちは宝物のようだった。

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 折りたたんだまま墨液に浸けていて、折り目に強く染み込んだり、内側があまり染まらなかったり、いろいろなことが布と墨の間で起こっていたのだろうと想像するだけで楽しい。

 乾かすために庭の繁った葉の上に掛けておいたら、自然にこうなったという布は、葉のあたったところが薄くなったものと、逆のものもある。墨が集まる葉と弾いてしまう葉があるのだろうか。

 そして、これらの布たちを見ることで、民子さんの布に関わるその行為や佇まいが垣間見えるように感じる。行為そのものが「美」のように感じる。

 このお宅の佇まい、そのもののようだ。

​ 私たちは、時を忘れて、この宝物に魅入っていた。

 

 後日、この日に撮影させていただいた写真を繋いだショート・ムービーを作ってみた。

 タイトルは「染めのアバンギャルド」。

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 実は、ずっと以前に、私は真喜志民子さんの個展のショート・ムービーを作ったことがあった。

​ それは、2014年10月のことで、この同じ月に勉さん、民子さんが続けてMAX PLANで個展を開催されたのだった。

 ちょうどその頃、私はiPhoneの写真機能にメモリー・ムービーを見つけ、何か機会があるとショート・ムービーを作っていた時期だった。

 今、見ると、素朴なスライドショーだが、勉さんが2015年に亡くなられてしまったので、これはこれで貴重な記録と言えるかもしれない。

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 そして、映像を見ると感じる、ひとつの後悔。

 この真喜志さん宅二階のギャラリー・スペースMAX PLANで、私は個展を開かせていただく予定だった。

 2012年12月〜2013年1月に名古屋市の葵倶楽部で開いた個展の作品を沖縄でも発表したくて、真喜志さんに個展開催の承諾までしていただいていた。

 キッチンがあるギャラリー・スペース。ハーブ泡盛も展示できる。ここしかないと思っていた。

 すぐに開いてしまえばよかった。でも、その時は、新作を加えたいとか、葵倶楽部の二階和室の襖に替わる斬新なプランを考え出さなければならないとか…、

 幾つかの窓は塞いで壁として使いたいとか、壁を作るなら次の人も使えるような取り外しができる構造にしたい、だとか、いろいろ考えすぎて時間が経ち…、

 結局、個展は実現しないまま、ギャラリー・スペースは閉じてしまった。

 

 そして、勉さんは翌年2月に帰らぬ人となってしまった。

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 今年(2021年)の9月17日〜26日に、真喜志民子さんはRENEMIAで個展〈墨/染/織〉を開催された。

 

​ 全く同じ日程で、4年間続けてきたTOM MAX Ehibition vol.4のラファイエットでの展示、10月8日〜17日にRENEMIAでの展示と続いた。

 RENEMIAでのTOM MAX Ehibition vol.4会場にいらっしゃった民子さんは流石にお疲れのようだった。

 かなり以前、西原の図書室+アトリエに遊びに来てくださったことがあり、その時、私が2005年から作り続けているハーブ泡盛を見ていただいたことがあった。

 窓際の展示棚の下に、専用の収納家具まで作ってあったのを、妻は「呆れますよね」と言いつつお見せしていた。

 しばらくしてから、何かの用事で妻が電話をしたときに、実はあのハーブ泡盛をいただきたかったのとおっしゃったという。

 そのときに仰れば良いのに、そこが民子さんよね、と妻が言った。このことがあったので、お疲れが取れたら、お好きなハーブ泡盛を選びながら遊びにいらっしゃってくださいとお誘いした。

 11月初めになって、図書室+アトリエに来てくださった。1週間ほど前に、屋外のサイン兼宅配ボックスの設置が済み、一通りリフォームが終了した良いタイミングだった。

 「Library & Studio #504」これが図書室+アトリエの名称。

 民子さんは、3本のハーブ泡盛を選び出された。

 ラベルが傷んでいたので、付け替えてからお渡しすることにした。

 11月中旬、4本のハーブ泡盛を携えて、真喜志家を訪問した。

 1本増えているのは、液の動きで瓶の中の、か弱いカスミヒメハギがしんなりしてしまったからだ。代わりにジュズサンゴの瓶を加えた。

 民子さんは、しんなりしてしまったカスミヒメハギを見て、これはこれで良いんじゃないと全て引き取って下さった。

 確かに、4本揃って置いてあると、ひとつがこういうのも良いかなと思う。

 きっとカスミヒメハギはゆっくりと朽ちていくと思うが、民子さんなら、その過程も楽しんで美しいと思ってくださるに違いない。

 隣が鯉江良二の作品という窓辺の特等席に飾っていただいた。

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 以前から真喜志家の美しいしつらえを撮影したかったので、この機会にお願いした。

 織染めとは無縁の不思議な道具もあった。

​ 数珠の型らしい。

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 お茶をいただきながら、話が弾み、お着物を見せてくださることになった。

 次々と箪笥から出して下さって、ご本人が最後に織られたお着物まで見せていただいた。

 宮平工房に、少しの間だけ通っていらっしゃった時のものだそうで、とてもきっちり織られた手縞だった。

 これで、お着物はお終いにされたそう。

​ 訪問は、贅沢な豊かな時間だった。

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