絵画としてのポジャギ

Work 2019-2

236.5×135cm  絹布、絹糸、黒色千枚岩

Work 2019-1で全面オーガンジーを主に二枚重ねにした透明感に、羽二重の半透明感をところどころに配した作品で、期待する空間性を得られたので、これをエスキスとして大作に挑みました。

​これまでに比べ、大きな布をむらなく染めなくてはならないため、黒色千枚岩での染めの工程にはかなり改善が必要になり、そのような下準備も含めると、制作期間は半年に及びました。

​この作品完成後、アトリエの移転などで暫く制作が中断してしまいましたが、新作の紹介も引き続き、このHPで行っていきます。

制作過程をショートムービーにしました。

ご覧ください。

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236.5×135cm  絹布、絹糸、黒色千枚岩

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ポジャギ制作のきっかけ

ポジャギを縫い始めたきっかけは不思議なことです。

 

私が琉球大学を定年退職する数年前から、美術科教育法担当の先生が二人で担当していらっしゃる3年次向けの授業が、座間味島で学生それぞれが作品を創るというシンプルな内容に変わりました。

この3年次での座間味体験から4年次卒業研究のテーマが生まれることが多くなっていました。

それで、最後の卒業研究の指導になる前の年度の2017年度、この授業に参加してみました。

 

その受講生の一人が、「座間味の植物で染めた色をはためかせたい」というザックリとしたテーマを掲げたので、それなら、試染した布を縫い合わせてポジャギにしたらと提案しました。

学生に提案して、ああ、昔から自分が縫ってみたかったんだなと気付きました。

 

座間味島に行ったのはこの時が2回目。初めて行ったのは赴任1年目か2年目の1982〜83年頃、行った船が帰るまでの数時間だけでした。

でもその時、海岸で黒い石を拾い、砕いて顔料にして使ってみたことがありました。雲母の含有が多く、その頃の使用目的には適しませんでした。これを思い出し、乳鉢持参で参加しました。

 

この石は「黒色千枚岩」と呼ばれ座間味島の西側一帯の地層に含まれていました。

砕けやすく、海岸に落ちていたのは、海岸の地層から砕け落ちたものが波に洗われて丸くなっていたものでした。

これを乳鉢で砕いて窓辺に置いておいたら、翌日うっかり落としてしまい、雑巾で拭き取った時、これって染まるんじゃないかと気付きました。とても微粒子になります。

採集して帰り、麻や絹の布に染めてみました。とても綺麗なグレーの階調が得られます。

これでポジャギを縫い始めました。その年、2017年の12月です。

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Work 2017-1

88×54.5cm  麻布、ナイロン糸、黒色千枚岩

黒色千枚岩で染めた麻布を縫い合わせた、ポジャギ作品の第1作目です。

​岩石を砕いた天然顔料染めですから、堅牢度は確実で、西日の当たり続ける窓の日除けに使ってみました。おそらくは褪色の心配は無いと思います。

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Work 2018-1

40×40cm  麻布、ナイロン糸、黒色千枚岩

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Work 2018-2

60×60cm  麻布、ナイロン糸、黒色千枚岩

前作のWork 2018-1で、構成し過ぎた感がありました。ポジャギには本来、端布を縫い合わせていったある種の偶然性が生んだ美というものがあります。それで、この作品ではWork 2017-1で生じた端布を制作のスタートにしました。これまでの縫い方が、巻きかがり縫いばかりでしたので、この作品は、ぐし縫いで制作してみました。

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Work 2018-3

180×73.5cm  麻布、ナイロン糸、黒色千枚岩

階段の踊り場の窓に合わせ、西日避けと飾り布として制作しました。これまでにない大きさでしたので、縫い子として内間汐梨さんに協力していただきました。「座間味の植物で染めた色をはためかせたい」と言って、私のポジャギ制作のきっかけを作ってくれた学生です。

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Work 2018-4

25×25cm  絹布、絹糸、黒色千枚岩

麻布の作品を4点制作し、縫いに少し慣れてきましたので、初めて絹布に挑戦しました。薄く半透明な羽二重の絹布ですので、巻きかがり縫いでなくかがり縫いにして、未処理になる縫い合わせの布口を守る意味もあり、表裏の二重にしました。

それで、作品はリバーシブルになります。

半透明で、裏側のずれた矩形が重なり複雑な調子が生まれます。

この作品では、1対2の比率の布を二つに折り正方形の作品に仕上げました。そのため縦の幅は表裏同じになります。これはこれで面白いのですが、より複雑な重なりと透け感を追及してみたくなりました。

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Work 2018-5

45×45cm  絹布、絹糸、黒色千枚岩

表裏を全く別の構成で作り、この二つを合わせることで生まれる、半ば偶然の複雑な透け感による作品を制作してみました。

表はランダムな幅で、裏はほぼ9分割の構成にしてみました。

結果として、表裏を合わせた時、裏面が当初の向きから180度回転した上下逆位置で最も複雑で面白い空間が生まれましたので、この向きで縫い合わせました。

その意味では、裏面は意図とは異なったもので、リバーシブルでは無くまさに「裏」になってしまいました。

​前作では、濃色のアクセントとして使った黒みの強いオーガンジーの透け方がとても面白く感じられたので、この作品では意識的にこのオーガンジーの部分を増やしました。

​この作品は、裏面の向きが意図とは異なるものの、「絵画としてのポジャギ」の空間を追及する可能性と自信を得ることのできた作品となりました。

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Work 2018-6

45×45cm  絹布、絹糸、黒色千枚岩

前作で、これまで私が絵画の課題としてきた空間性が、この「絵画としてのポジャギ」でこそ追及できるる可能性を感じました。

この作品では、表裏どちらもが魅力的で裏面になる構造の透過により表面の空間性(押しと引き、前後の揺れ)が活きるような構造になることを目指しました。

結果としては、当初の予定通りの組み合わせでなく、90度回転した状態が最も魅力的な絵画空間となってしまいました。

当初の予定通りに縫い合わせるか、表裏の向きが変わってしまうのを是とするか迷いましたが、やはり、絵画空間が魅力的である方を選びました。

やや不本意ではありますが、角につける錘の石を四隅に付けることで、どの向きにでも展示できるようにしました。

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Work 2019-1

64×36cm  絹布、絹糸、黒色千枚岩

これまでは、羽二重の絹布を主に、一部にオーガンジーの絹布を配して構成してきましたが、より透明感を強め、その中でところどころにある小さな面が浮かび上がる空間を作りたいと思い、オーガンジーを主とした作品を制作しました。

透明性が高まったため、表裏どちらもがよりあからさまに見え、構造の透過により表面の空間性(押しと引き、前後の揺れ)が活きるような構造になるためには、より細心の構成が必要となりました。

結果としては、これまでで最も満足のいく作品になりました。これをエスキスとして大作に挑むことにしました。

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